書類送付状とFAX送付状の違いを徹底解説

書類送付状とFAX送付状の見本が並んで表示された画像。左側は会社宛てに送る一般的な書類送付状で、文章の冒頭に挨拶文があり、送付書類の一覧が記載されている。右側はFAX送付状で、送信先と送信元の情報記入欄があり、FAX送信の挨拶文と送付枚数の欄が設けられている。

ビジネスの現場では、契約書・見積書・報告書などの各種ドキュメントを取引先や社内外の関係者に送付する機会が頻繁にあります。その際、単に書類のみを送るのではなく、必ず「表紙」となる書類送付状(カバーレター)あるいはFAX送付状(FAXカバーシート)を添えることが望ましいとされています。

両者は一見似ているようでいて、誕生した背景や目的、記載内容、デザイン、マナーに明確な差異があります。本稿では、二つの書式を比較しながらそれぞれの特徴を詳しく解説し、適切に使い分けられるようにポイントを整理します。


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1. 定義と歴史的背景

送付状は「挨拶状」

書類送付状は、郵送・宅配・メール添付・社内便・手渡しなど、あらゆる媒体を問わず「ドキュメントを送る」という行為全体に付随する“挨拶状”として発展してきました。もともとはビジネスレター文化を受け継ぐ形で定着し、英語圏では“Cover Letter”と呼ばれます。

スーツ姿の男性が書類送付状と封筒を持っているイラスト

FAX送付状は「管理用表紙」

対してFAX送付状(以下、FAX送付状)は1980年代以降、ファクシミリ通信が企業間の標準ツールとして浸透する過程で誕生したもので、当初からFAX機器の技術的制約を補うための“管理用表紙”として設計されています。

したがって、送付状は「礼儀と説明」に重きを置き、FAX送付状は「通信トラブルの防止と情報管理」に重きを置くという性格の違いが根底にあります。

スーツ姿の男性がFAXで見積書を受信しているイラスト

まとめ:送付状はビジネスレターの延長、FAX送付状はFAX誕生とともに生まれた管理用表紙


2. 用途と目的の違い

比較項目送付状FAX送付状
目的丁寧な文章で「いつ・誰が・何を・なぜ送ったか」を伝え、同封資料の概要と読み方をガイドし、受取人の心理的負担を軽減する。①総ページ数を示して欠落を検知する②誤送信時に連絡を求める③差出人・宛先のFAX番号を強調し読み間違いを抑止――事故防止が中心。
想定リスク・配慮相手が内容をスムーズに理解・検討できるよう、敬語表現と配慮を重視。紙送り不良・回線ノイズなどFAX特有のトラブルを前提に設計し、情報漏えい・ページ欠落を防ぐ。
記載の重点挨拶文・敬語、資料の概要と読み方。ページ数・連絡先・FAX番号などトラブル回避に関わる情報の明示。

送付状は礼儀と説明、FAX送付状は事故防止と情報管理が主目的


3. 使用シーン・場面の違い

送付状は契約書や提案書など「礼を尽くす」場面で活躍

送付状が活躍するのは、契約締結前後の正式書類送付、取引条件変更のお知らせ、パンフレットや試供品の同梱といった“対外的に礼を尽くす”場面です。

特に高額商談や長期プロジェクトでは、送付状が相手先フォルダに残り、後日の文書管理台帳にも転記されるケースが多いため、社名・担当者・連絡先を正確に記載することが後々の問い合わせ減少にもつながります。

スーツ姿の男性と、契約書に署名するアイコン、書類を確認する手、3種類のフォルダが描かれたイラスト

FAX送付状は見積・発注など「スピード重視」の場面で威力

FAX送付状は、見積書・注文書・発注書など「スピード命」の書類送受信で多用されます。発注締切が迫る中で確実に枚数を確認してもらい、誤送信時のリカバリー手順を明示することでリスクを低減します。

また医療機関・金融機関など依然としてFAXを標準とする業界では、個人情報保護の観点から「誤送信時の速やかな破棄連絡」を促す文言が必須要件として内部規程に組み込まれていることも珍しくありません。

FAX機から見積書とカバーシートを素早く送信しているイラスト

送付状は正式書類や販促資料、FAX送付状は見積・発注などスピード重視の場面で活躍


4. レイアウトの違い

送付状は挨拶文+書類概要を美しくレイアウト

送付状に求められるのはビジネスレターとしての整った挨拶文と、同封書類のリスト、送付部数、連絡先などです。文章は前文・主文・末文の三部構成が基本で、前文では季節の挨拶や日頃の謝意を、主文では送付目的と書類概要を、末文では今後の対応やお願いを示します。

文字量はA4一枚で収まる程度が通例ですが、あえて空白を広くとり、企業ロゴやブランドカラーを配置することで視認性とブランディングを両立させる例も多いです。

基本レイアウトの送付状の見本

FAX送付状はモノクロで項目を整理し即読性を優先

対照的にFAX送付状は、極力余計な装飾を省き、モノクロ出力でも読みやすいゴシック体・12ポイント以上のサイズを用いるのが定石です。

上部中央に「FAX送付状」「FAX」などのタイトルを大きく配置し、その下に宛先・差出人の会社名とFAX番号、送信日時、件名、総ページ数(表紙を含むかどうかを明記)をブロックごとに整然と並べます。文章よりも“箇条書きの項目表”が中心となるのが特徴です。

送付状は文章主体で自由度高く、FAX送付状は項目表中心でモノクロ前提

FAX送付状テンプレート004

5. 記載項目・書き方の違い

記載する項目や内容、書き方などは、タイトル以外はほとんど同じです。

項目書類送付状FAX送付状
タイトル書類送付状、送付状、送信状FAX、FAX送付状、FAX送信状、FAX送信表
日付書類送付日を記入FAXを送る日を記入
宛先送信先の会社名、部署名、担当者名送信先の会社名、部署名、担当者名
差出人送信元の会社名、住所、電話、FAX、担当者名送信元の会社名、住所、電話、FAX、担当者名
あいさつ文季節の挨拶と日頃の謝意、送信する書類の概要季節の挨拶と日頃の謝意、送信する書類の概要
書類内容記書きを使って、書類名と部数を本文中に箇条書きで示す記書きを使って、書類名と部数を本文中に箇条書きで示す

6. 作成時の実務的チェックリスト

送付状

  1. 宛名部署と担当者名の正確性(社名の表記ゆれに注意)
  2. 季節の挨拶や前文が長過ぎないか(全角150文字程度が目安)
  3. 同封書類の正式名称・部数・枚数の網羅性
  4. PDF化する場合のファイル名規則(例:YYYYMMDD_会社名_書類送付状.pdf)
  5. 社内承認印や電子署名が必要かどうかの確認

FAX送付状

  1. FAX番号の桁漏れ・桁違いチェック(海外宛は国番号含める)
  2. 「本紙を含め全○枚」表記が実際の枚数と一致しているか
  3. 余白設定が印字可能範囲からはみ出していないか
  4. 誤送信時の連絡先が「直通」か「代表」かの区別を明確化
  5. 情報漏えいリスクの高い個人情報を本文に記載していないか

7. まとめ

書類送付状は「ビジネスマナーを体現するレター」、FAX送付状は「通信トラブルを最小化するチェックリスト」という位置づけで設計思想が大きく異なります。送付状では丁寧な挨拶文と書類概要を示すことで“人”に配慮し、FAX送付状では総ページ数・誤送信時の連絡先など“機械と通信”に配慮することでリスクを制御します。

両方を正しく使い分けることは、顧客満足度と情報セキュリティの双方を高める施策であり、業務効率の向上にも直結します。今後もFAX文化は完全には消えないと予測されるため、二つのフォーマットをアップデートし続けることが、組織の信頼性を守り、円滑なビジネスコミュニケーションを実現する鍵となるでしょう。